臨床心理学

目次

EBMとNBM

EBMは、「根拠に基づく医療」と訳されるもので、1990年代初頭に提唱
される。統計的に実証されたデータを根拠として治療を行うアプローチ。
例えば精神分裂病に対しては、精神分析よりも薬物療法の有効性が
実証されている。しかしEBMは、普遍性を重視するあまりに患者の固有性
を軽視してしまう危険を伴う。一方NBMは、「物語と対話に基づく医療」と
訳されるもので、1990年代後半、医療・医学において提唱された概念。
新たなパラダイム・シフトをもたらすものと考えられている。NBMは、社会
構成主義的な観点を取り入れたもので患者を理解するために、客観的
事実だけでなく、物語として語られる主観的世界をも含めた全体性を重視
するアプローチ。

臨床の知

臨床の知とは、哲学者である中村雄二郎が提唱した知のあり方。従来
の「科学の知」は、客観性・普遍性を重視するあまりに対象から距離を
置き、表面的な分析に留まる危険がある。一方「臨床の知」とは、対象
との相互作用との中で、主観的・共感的に対象を理解しようとする知の
あり方である。サリヴァン,H.S.以降の関与(参加)観察に代表される
面接技法や事例研究法は、「臨床の知」としてのアプローチである。

臨床心理学の領域

①心理査定―クライエントのパーソナリティ全般(知能・性格含む)を
理解する。心理テスト・面接などの技法を用いる。②心理面接―
クライエントを心理的に援助する。カウンセリング・心理療法・集団
心理療法・家族療法などの技法を用いる。③地域援助―社会システム
に心理学的な介入を行うことで、クライエントの精神的不健康からの
回復および精神的健康の維持をはかる。
以上に加えて、理論的な研究も重要であり、精神医学や教育学・
社会学・福祉など他分野との交流が必要不可欠なのである。

臨床心理学

臨床心理学とは、一言で言えば、「人間の理解と援助のための
心理学」である。臨床心理学という言葉を初めて使ったのは、
1896年、ペンシルバニア大学に世界初の心理学クリニックを
開いたウィットマーである。米国心理学会(APA)の定義による
と、「臨床心理学は応用心理学のひとつである。測定・分析・
観察することによって個人の行動能力と行動特性を明らかにし、
またこれらの所見を総合して治療(処置)に結びつけるもの。」
とされているのである。

 

 

 

This article was updated on September 8, 2022